八ヶ岳B級名所案内
  取材日は11月29日 紅葉も終わって、次々に裸になっていく木々を尻目に
  こはいかに!? 新府の里は一面の花で埋め尽くされていたではありませんか♪
  しかし一見華やいで見える「里山」で、悲喜こもごもの話と出合ってしまったのです。
  冬の花満開だけど・・・ 
 

新府桃の里は年に2回花の時期を迎えます

全国的に有名な「春の桃の花」と、今が旬の「冬の花」です。

ご覧下さい、 茅ケ岳まで届けとばかり白い花の波が果てしなく続いています。

 

  西を振り向けば、こちらにも南アルプスの裾野に届かんばかりの 花畑が続いておりました。

静かな里山に

時ならぬ花の光景

一体、これは何の花なんだろう?
「桃の花」って年に2回も咲くんだっけ?
しかも
良く見ると「青い花」まであるではありませんか!?
ノ、ノーベル賞ものか、「青い桃の花」!
 
 
 
 
 
しかし
近付いて
更に良く見ると、
なんだか「花」はペラペラだ
やけに「四角い」ぞッ(^_^;)
で、謎を解くべく
仕事中の農家の方々に
話を聞いてみたのでした
   
「こりゃぁなぁ、春にかけた袋でなぁ、剪定の時期までほっとくだ」
 
「なんで袋をかけるんですか」
「ほりゃ、雨よけもあるし、農薬よけもあるし、いろいろサ」
「農薬かけるんですか」
「ほりゃなぁ、葉っぱが病気ンなっちまうと光合成できんから」
「葉っぱに薬まくときに、薬品が実に付かないようにするわけですね」
「ほうさ」
 
「雨よけにもなるんですか」
「ちったぁなぁ。雨にあたんとすぐ腐っちもうから」

「今が剪定の時期なんで 袋も一緒に落としてるってわけですね、じゃこの“花”はこれから見られなくなる?」
「いや、1月くらいにやる家もあるしなぁ」
「じゃ、年明けでも見られるってことですね」
「まぁ、兼業で他んことやってる家もあるし、婆さんだけでやってるとこもあっから、いろいろだぁね」
 
「いやしかし、きれいですね〜」
「そうさぁ、新府駅がそこにあるら、JRの窓から良く見えてなぁ、“なんの花だ”って駅で降りてワザワザ見に来た人おるよ」
   
「それにしても一体枚数にしてどのくらいあるんですか」
「ウチは4万枚だけど、あそこは8万枚、多いトコは15万枚くらいだねぇ」
「エ、エ、エッ!それを春になるとかけるんですか!」
「まぁねぇ・・」
「どのくらいかかるんですか」
「わけェ時は、はかがいったけんど、いまじゃなぁ、1人で一日2000から3000枚かねぁ」
「夫婦で4〜5000枚ってとこですか」
「夫婦だと4000枚かねぇ、しゃべくっちまうからなぁハハハ」

「8万枚の袋とすると約20日間ですね」
「おうさねぇ、それも朝飯前からやりだして、チョっとごはん食べに帰って、それっからまた夫婦しておそくまでなぁ」
「大変な仕事ですね〜」
「子供にちょっと手伝わせたら“もうやらん”ちゃって東京行っちまった。ここらじゃ後継者いねえだよ」
「え、桃も後継者不足なんですか」
「どうすんかね〜・・・、でも楽になったんだよ、ずーっと。コレのっけってやるか」
といって奥さんは作業用機械に乗せてくれた。
キャタピラで移動し、立っている「床」がエレベーターのように自由に上下する「フルーツなんとか」という機具の名前を教えてもらったが忘れてしまった。たしかにコレなら首は痛くならないし、腕も楽だ。脚立を使っていた頃とは雲泥の差だろう。
   
「袋に青と白があるのはどうしてですか」
「ああ・・、袋ってのは一種の独占企業っちゅうだかねえ、もういいなりさ」
「というと?」
「青い方が光りのあたり具合が、っちゅうけど、あんまりかわらんねぇ、高いばっかで・・・」
 
「剪定は楽さ、気が楽さ、春が忙しい。摘蕾、摘花、袋賭けなぁ、人は雇えんし」
「摘蕾ってどうやってやるんですか」
「親指とひとさし指で蕾をすりつぶして、こう」→
「今時のわけえのはケータイでこういうの慣れてるからヤレって息子にゆうんだけど、だめだってサ(笑)」

   
「他のフルーツにくらべりゃ桃なんて簡単なんだけどねえ、ちょっと基本を覚えりゃぁ、後は木がやってくれるだから」
「っつってもねえ、野菜なんかと違って桃は嗜好品だから、値段が高きゃ買わんし」
「4万袋かけたってまぁそのうち75%だねえ、で、あんた年によっちゃ¥100円って言われた日にゃ、計算してごらん、なんぼになるか。やってらんねえかもなぁ」
「・・・・(計算中)(^_^;)」
「自然にゃかなわんからねぇ、雨降りゃ腐るし日が出なきゃ糖度があがらんし、風でも吹きゃ落ちるしな」
「都会から来ませんか、農業やりたいっていうのが」
「たまにくるけどね、やらせてくれって。あんまり長続きしねえな、えらくって。どうなるだかなあ、この農地・・・」
 

 

 

「桃は固いのをかじるのが美味いんよ、リンゴみたいに。ウチの子らぁ、それしか食べん。出荷ん時は青いのよ、それを皮ごとよ〜く洗って皮ごと食べてごらん、美味いから」
「そりゃ、木で完熟したんも美味いサ。でもお客さんらは食べられん アハハ」
「コノ頃はもうこのあたり、どうだかなぁ平均年齢で70っくらいかねえ。今年はあそこがやめる、去年はあそこがやめた、っつう話しかないねえ」
「ンでも、こうやってあちこちで袋が地面におちるようになると、あ〜もうそういう季節だなあって、アッチでもやってるなぁ、ウチもやらんとなぁって気になるよ」
「春はすごい人出だけどこの“冬の花”も時々写真雑誌に投稿する人がいるらしくて毎年撮りにくるのがおるね」
「なんとか残したいですね・・・」
「う〜ん・・・・」

紛れもなく「A級名所」である「新府桃の里」。冬バージョンはB級かと思ったが、今回たまたま話を伺った3軒の農家の方々の対応は超A級。仕事中だというのにコチラの話に付き合って下さった。(話し言葉は方言風にきこえた個所を私が適当にアレンジしてますので、地元の方にはかなり違和感があると思います、すみません) 春の桃の時期にも感じることだが、ここの農家の方々は本当に観光客に丁寧だ。春の摘蕾摘花などは、観光客の為にわざわざ車道から遠いトコロから初めているのです。感謝。

後継者不足を嘆きながらもあれこれ気を使いしかも楽しそうに仕事をやっていらっしゃる姿に脱帽。「先行き不透明な現状」は農家の方々のせいではありません。ここを冬とはいえ「B級名所」と紹介するのは気が引けます 。地元の方々には見慣れた「あたりまえの風景」かもしれませんが、間もなくこの風景がなくなるかもしれないのです。少しでも多くの方に関心をもってもらえば、という意味で、あえて紹介いたしま した。

この景観がいつまでもここにありますように、と祈りながら。


2009年11月29日
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